大切な人(ゲスト)に正しく伝える事

大切な人(ゲスト)に正しく伝える事

『穴井くんは少し理屈っぽすぎるよね、そんな事いちいち説明してもお客さんはわからないし聞きたくないよ。』
昔、僕のカウンセリングを聞いて上司に言われた一言…
お客さんはスタイリストを信じて指名しているのだからよきにはからえでやった方がいいというニュアンスのことを言われた。
伸び悩んでいたいたあの時期にどうにか殻をを破れるようにとアドバイスだったのか、本当にそう思っていたのかはわからない。
それでもあれから10年、理屈っぽいスタイルを突き通してる自分は筋金入りの理屈好きだと思う。

さて、なんで急にそんな話!?と感じるでしょ?
ふと思い出して考えてしまうシーンがありまして…
先日、ゲストの方にご予約のお電話をいただいたのですが、時間の都合が合わずお断りしてました。それから三日後くらいかな、そのゲストからご連絡をいただきまして
『穴井くん、ごめんね。急いでたから他のとこ行ったんだけど…変だから直して』
(ちなみに全然僕はそういうの気にしないんで、ごめんねなことはないですよ。むしろこちらが時間の都合つかなくてゴメンなさい)
とのこと。変って…気に入らないってこと?うーん、誰かの作ったヘアスタイルを変だから修正するという考えをそもそも僕は持ち合わせていない。
その後、僕がcutするということは修正ではなく、新しく僕のデザインを切ることだから。

とまぁ、自分の中の理屈をこねながらゲストにご来店いただき、カウンセリングスタート!!
まずはどのようになりたいのか?
…って聞いてるのに、前の美容室へのクレームが止まらない(苦笑)
いや、お怒りは分かりましたから落ち着いて!!
どうやらお怒りの本質は、カウンセリング時になんとなくなニュアンスと可愛くするね的なことしか伝えられず、終わってみれば何もオーダーが叶っていない…という内容らしい
そこで食い下がってもっとこうしてほしいと伝えたところどんどん違う方向に迷走が始まり、(その美容師さん的には)この方が可愛いよ!って終わったとか…
うん、その対応、僕に慣れてる人なら怒るわな…
『穴井さんはいつもこうしたらああなる、ここはこういう理由でこうした方がいいって説明してくれるじゃないですか。自分がおかしなこと言ってる時は何故おかしいか教えてくれるでしょ?そんなのなく、うんわかったわかった的に進めていくから、わかってないや〜んってなって…」
(もう、みなまで言うな、痛ましい)
で、いつものようにカウンセリングでああでもないこうでもないやった結果、ご満足頂いたようで何より!

こんなエピソード、美容師なら皆経験のあることのなんですけどね。
何が言いたいか?っていうと
(僕的には)そろそろ技術に知識的裏付けのない美容師はこの先きついのでは?ということを感じたということ。
ゲストの要望が多様化してきて、皆さん自分仕様のヘアスタイルを求めてる昨今、昔みたいに今シーズンはこのスタイルが可愛いい!!流行だ!では乗り切れないよね。
(もちろんオーダーメイドにトレンドはスパイスみたいに付け加えるけどね)
ゲストも情報多寡のこの時代、たくさん知識をつけてきて、理屈を説明出来ない人を信用しなくなってきてる。
ゲストは何故それがかわいいのか?何故そのヘアスタイルを気に入っているのか?そのヘアスタイルを気に入っている理由は形?質感?カラー?
そんなゲストが言葉にできないことを言葉で理由付けて、解説してあげることも僕たちの仕事だと思う。プロとしてのあり方の変化かな!?前時代的カリスマでは地方はなかなか厳しいね。
きっと前述した美容師さんが下手だったわけではないと思う。
願わくば10年前僕に理屈っぽくなるなと言ってくれた上司のように、今はその方に理屈をしっかり身につけなさい、説明しなさいと言ってくれる方がいることを願うばかり。
きっとどっちもできたら幸せになるゲストは増えるよね。

今年、Arehaは移転し、新しいスタートを切る。いい機会だと思い基本をしっかり見つめ直す勉強に毎月関西に通っている。そこでは一つ一つ丁寧に技術の裏付けをトレーニングし直す。当たり前だけど大切なこと。昔、先輩方に基本だと口すっぱく言われていたことの意味が今だから理解できる。
今更のようにウィック(一般の人には怖い首…)を何体も、トレンドのスタイルというわけではない、なんでもない基本のカット練習。ここに大切なものがすべてあったのだと実感出来る。
偶然、このエピソードと自分の環境が重なったのでつらつらと思ったこと。
不快な方がいたらどうぞスルーしてください。あくまで私見です。

この僕の理屈っぽいスタイルにおつきあいいただいているゲストの皆様、本当にありがとうございます。
でもまだまだとんがって突き詰めて、技術と知識で皆様のヘアスタイルに恩返ししていきますのでどうぞこの先もよろしくお願いします。
という気持ちの移転前最後の一ヶ月!!気を引き締めて頑張ります。

他の「other」の記事を読む

ハサミの余韻…

ハサミの余韻…

新美容出版「経営とサイエンス11月号」掲載

新美容出版「経営とサイエンス11月号」掲載